SCENE14 管理のトレンドは定量化 病院管理・看護管理と数字の密接な関係

 数字が読めない管理者に人権は無いかのような管理と数字の関係がある。看護管理者で数字を基にプレゼンテーションがなされるとカッコイイと思う。さて、そんな数字を中心とした管理が進んでいる背景について知ってほしい。

 今回のミドルマネジャーの勉強会は、病院経営と管理に関する数字について学ぼうということになった。薬剤部の岡田さんを講師に、「病院経営と管理に関する数字」というテーマで勉強会が開催された。

石崎:本日は、岡田さんに無理を言って、「病院経営と管理に関する数字」というテーマについて話をしてもらいます。皆さんも日々、数字に追われていると思いますが、病院経営と管理にかかわる数字について学んでください。それでは、岡田さんよろしくお願いします。

岡田:今日は、病院経営にかかわる数字について説明します。病院経営と管理に関する数字は、財務(図18)(図19)、CI(Clinical Indicator)、管理会計や経営工学を源流としています。財務については、貸借対照表と損益計算書が源流になっています。貸借対照表は、資産や負債の状況がわかる財務諸表です。損益計算書については、1年間の収入(売上)や支出(費用)がわかる財務諸表です。財務諸表の詳細は、参考書の(「師長の病棟経営数字」(26.財務諸表と経営数字のセミナーに参加)を読んでください。

 次に、(図19)の総収益の構造を見てください。病院の収入である総収益で重要な部分は、外来であれば外来収益であり、外来単価と外来患者数をかけたものであらわされます。そして、この外来単価を表しているものが、点線で囲った部分である診療報酬の部分となります。続けて、CIについて説明します。CIは、クリニカルインディケーターという臨床評価指標と言われるもので、医療の質や医療機関の質を評価するための指標です。代表的な指標として、各疾病の在院日数や病院全体の在院日数、特定の疾病の手技までの平均時間など臨床に関する指標となります。この指標をもとに、病院間でベンチマークしたり、臨床の改善に利用したりします。CIを導入している病院はまだ少ないのですが、今後は増加していくことになると思います。最後に、管理会計についてですが、管理会計は原価計算などの病院内部の原価を管理するためのものです。こういった管理会計については、会計だけでなく経営工学的なアプローチがされています。病院経営の経営工学の応用として、クリティカルパスやBSC(Balanced Scorecard)といったものがあります。

奈須:クリティカルパスは、経営工学の応用だったのですか。

岡田:クリティカルパスは、オペレーションズ・リサーチ(Operations Research)という科学的で、論理的に物事を決める学問だよ。数学などを多用して、物事を判断したりするんだ。

奈須:BSCについて、もっと教えてもらってもいいですか?

岡田:BSCは、(図20)のように、風が吹けば桶屋が儲かる仕組みと似ているんだよ。

奈須:えっ?

岡田:半分冗談だけど、BSCと風が吹けば桶屋が儲かるというのは、それぞれ、連関になっている。そんなことが分かってもらえるといいかな。「風が吹けば桶屋が儲かる。」の仕組みは、「①風が吹く、②砂が舞う、③目に砂が入る、④目が見えない人が増える、⑤この人たちは三味線を弾く職業につく、⑥三味線の材料となるため猫皮が必要になるので猫が減る、⑦ネズミが増える、⑧桶をかじる頻度があがる、⑨壊れる桶が増える、⑩桶屋が儲かる。」となっている。BSCは、この「風が吹けば桶屋が儲かる。」の論理と同じと考えてください。

 BSCは、バランス・スコアカードの略で、システムダイナミクス(System Dynamics)という工学の経営への応用です。(図20)を用いて、BSCについて説明すると、BSCとは、4つの視点に注目することにより、最終的に財務を良くしていこうということになっています。これを桶屋が儲かる論理に合わせると、①成長と学習の視点:社員や職員が成長したり学習する、②内部プロセスの視点:社員や職員の成長は業務改善や他社などに比べて競争優位になる、③顧客の視点:業務改善などは顧客へのサービスなどが向上につながる、④財務の視点:顧客が喜ぶと儲かる。こんな連関を築いているのがBSCなのです。隣に、桶屋が儲かる連関を付けてあります。

 BSCは、この連関をより詳細に作ることにより、戦略マップの次の視点を向上しようとしています。例えば、桶屋が儲かるマップで説明すると、マップでは、桶屋が儲かるためには、ネズミが増えればいいことが一目瞭然です。BSCでは、そんな相関性の高い項目を見つけ出して対策をとることにより、経営を良くしていこうとする手法なのです。BSCの基本は、経営がよくなるために相関のある項目をいち早く見つけ、その項目の評価指標を上げる対策を作ることが重要となります。それとITにより評価指標が自動で見ることができることです。

奈須:岡田さんのセンスは抜群ですね。BSCについて根本が理解できました。そういえば、何で管理には、数字が重要なんですか?

岡田:管理は、数字が全てではないんだけど、世界的に企業の経営や管理のトレンドが数値化の傾向にあるんだよ。それが、どんどん病院経営や管理に入ってきているんだ。医療もうそうだけど、定性的な評価から定量的な評価にするでしょう。看護必要度や患者の重症度も点数化してあるよね。あれって、定量化でしょ。

奈須:なるほど、いかに数字にするかがポイントなんですね。でもなぜ、数値化するんですか?

岡田:定性的なものより定量化されたされた方が判断しやすいでしょう。例えば、CRPも高い低いでなく、10.0だから抗生剤を投与するというように数値の変化により、簡単に判断できるでしょ。それと数値って、世界共通の絶対的な評価基準だからね。0は0、1は1とこれって、世界のどこに行ってもわからないでしょ。そういう意味では、世界の共通言語といっても過言ではないよね。

奈須:そうなんですね。

 医療も経営もいかに定量化し、判断していくかが勝負です。定量化の流れは、今後も続くことは間違いありません。定量化されていく現代社会のことを考えると管理において最低限の管理に関する数字を知っている必要があります。そんなことを言っても、スタッフの管理は数字だけでなく情熱と根性も必要です。